フレンチのスープは手間暇かけた贅沢な一品ばかり! さまざまなスープをご紹介

フレンチのスープは手間暇かけた贅沢な一品ばかり! さまざまなスープをご紹介

フレンチのコース料理におけるスープについて、あまり強いこだわりをお持ちの方はいらっしゃらないかもしれません。
華やかなコース料理の中においてスープは一見とても地味な料理です。しかしながら、実際にはフレンチのスープはたいへん多くの食材と時間や手間をかけた味わい深い一品なのです。今回はそんなフレンチのさまざまなスープについてご紹介します。

フレンチのスープの特徴

フレンチのコース料理では、スープは前菜(オードブル)の後に出てきます。一般的には具のない滑らかな舌触りのものが出てくることが多く、季節やコースの編成によって温かい、または冷製のスープが提供されます。変わったところではピュレと呼ばれる、コンソメなどのスープをゼリー状に固めて食べるタイプのスープが出てくる場合もあります。

これはフレンチの特徴の一つでもありますが、あまり熱々のスープは出てきません。優しい温度のスープは本格的な料理を食す前の適度なウォーミングアップの役割を担っています。本来フレンチのコース料理においてスープは必ず出すものですが、シェフの方針やコースによっては省略されることもあります。

「ポタージュ」の認識は、日本とフランスで異なる

本来フレンチでは、汁物全般を「ポタージュ」と呼びます。その中でも、大きく「スープ」と「ポタージュ」の2つに分類されます。日本では、とろみのついたもったりとしたスープを「ポタージュ」と呼びます。例えば、かぼちゃのポタージュや、ジャガイモのポタージュのように、一つの野菜をペースト状にしたものを指します。しかし、フランスでは、澄んだスープも、とろみのついたスープも関係なく、スープ全般を「ポタージュ」と言います。また、とろみのついたものは「ポタージュ・リエ(potage lie)」、澄んだスープのことは「ポタージュ・クレール(potage clair)」と呼びます。

スープを飲む際に気を付けたいマナー

マナーに気を遣うフレンチでは、スープの飲み方に悩む方も多いかもしれません。平たいお皿でスープが提供された場合は、左手でお皿を向こう側に傾けながらスプーンですくって飲みます。もし取っ手付きのカップでスープを提供された場合には、カップに直接口を付けて飲んで構いません。

スープを飲むときに陥りがちな失敗が、音を立ててしまうことです。スープはすすらずに、口に流し込むイメージで食べると音が出にくくなります。具が多いポトフのようなスープの場合は、具を食べるつもりで食します。また、スープと同時にパンが出されることがありますが、正式なマナーとしてはパンをスープに浸して食べることや、パンでお皿をぬぐうのは避けたほうがよいでしょう。

フレンチの代表的なスープ「コンソメ」

フレンチの代表的なスープの一つといえば、コンソメです。コンソメの定義が「澄んだブイヨン」ということからも分かるように、コンソメスープとは琥珀色の透明なスープを指します。具がなく非常にシンプルな見た目ですが、コンソメスープはさまざまな食材で出汁を取る、非常に手間と時間のかかる贅沢な一品です。コンソメスープの材料は、人参や玉ねぎ、セロリといった野菜から、牛肉や鶏ガラまでたくさんの食材を用います。はじめに野菜・肉を長時間煮込み、その後卵白を使うことでアクや脂、汚れを吸着させて濁りのない味と澄んだ味わいを実現させます。

「コンソメ」という言葉はフランス語で「完璧な」「完成された」という意味ですが、本来は「消費する」「使い切る」という意味でした。長時間煮詰めることで保存期間を延ばして材料を余すことなく使い切るという調理目的からも、コンソメの特徴を伺うことができます。

フレンチの代表的なスープ「ビスク」

フレンチの定番のスープの一つに、「ビスク」というものがあります。ビスクは見た目が赤く、少しもったりとしたテクスチャのスープです。主な食材としてエビやカニといった甲殻類を用い、香味野菜と一緒に煮込んですりつぶすことでエキスを存分に絞り出したスープとなります。生クリームを使った滑らかかつ濃厚なクリームベースが魅力的な一品です。

食材の甲殻類にはエビやカニ以外にも、ロブスターやザリガニ(エクルビス)を使うこともあります。ビスクは非常に旨味が強いため、パスタやオムレツのソースのベース、パエリアの出汁として使われることもあります。ちなみに、ビスクをソースとして使う場合は「アメリケーヌソース」という呼び方になります。

ビスクの名前の由来として、2つの有力な説があります。ひとつはフランスのビスケー湾を由来とするもの。もうひとつは二度焼きという意味の「ビスキュイ」を由来とするものです。ビスクを調理する過程の「煮込んで濾す」という工程を指しています。

そのほかのフレンチのスープ

フレンチには、先に挙げたようなスープ以外にもさまざまなスープがあります。暑い季節には、ジャガイモのポタージュ「ヴィシソワーズ」、トマトをメインとした「ガスパチョ」、コンソメをゼリー状にした「ゼリーコンソメ」といった冷製のスープが好まれます。また、一般的なスープとは少し違ったところで、具だくさんの田舎風スープや、西洋茶碗蒸し(フラン)をスープ代わりに提供する場合もあります。

ほかにも、カプチーノのように白い泡仕立てのスープは見た目にも楽しませてくれるスープの一つです。かつてフレンチでは泡を消すためにシノワ(ざる)で濾したり表面の泡をすくって取り除いたりと労力を割いてきましたが、今では泡仕立てのスープは一般的なものとなっています。

まとめ

今回はフレンチのスープについてご紹介しました。横浜のフレンチビストロ「lemidi ルミディ」では、新玉ねぎの優しい冷製スープをはじめとした、食事の始まりにふさわしい優しいスープ作りを追求しています。じんわりとおいしさが広がる自慢のスープで、ホッと肩の力を抜いていただければ幸いです。